「週刊ポスト」に「安倍総理よ、天皇陛下に『特措法』
とは何たることか!」という記事が大々的に載っていたので
驚いた。
わしに電話インタビューがあったのだが、このタイトルで記事を
作るとは知らなかった。
編集者の思いっきりの良さ、優秀さが窺い知れる。
記事中で亀井静香が、天皇陛下は国政に関する権能を有しない
のだから、退位したいなどと言ってはならないと主張している。
「もっと早く宮内庁が公務を減らすべきだった」などと言っている。
まったく陛下のご真意が分かってないのだ。
そもそも天皇陛下を、お飾りかロボットにしておいて、都合よく
政治利用だけしたいと思っている政治家や自称保守が多すぎる。
だが言っておくが、天皇陛下は政府に直接、典範改正を要求した
わけではなく、国民に訴えたのだ。
政府が何もしてくれないから、国民に対する玉音放送となったの
である。
政治的発言になるという批判が起こることも覚悟の上であり、
そこは徹底的に気づかって、「個人として」の発言とも断わって
おられる。
天皇陛下は「高齢のため退位をしたい」「皇位を譲りたい」
「公務を減らすことは意味がない」「摂政もダメだ」と明言され、
「皇位の安定的継承を望む」と、国民に理解を求められたのだ。
これに対して、国民の80%から90%に上る者が、陛下に感謝して、
陛下の望みを叶えてあげてほしいと願っている。
さらに一代限りではダメだとも国民は思っている。
政府はこの国民の声を受けて、皇室典範を改正すればいいだけだ。
官邸スタッフの声として、皇室典範の改正には憲法改正が必要に
なると言っている者がいるが、バカバカしい。
憲法の規定通りに、皇室典範の改正をやればいいだけで、
「特措法の退位と即位」の方が、憲法違反になるのは、真っ当な
憲法学者なら自明の理だろう。
この記事の最後にも、久能靖氏の発言で、皇室典範の改正には、
憲法第一章の改正が必要になるかもしれないと言っておられるが、
これは誤りだ。
憲法の「国民の総意に基づく」というのは、「象徴天皇の地位」に
関する条文であって、典範の条文までが「国民の総意に基ずく」
わけではない。
どうも典範改正を無理やり憲法問題に結びつけて、阻止しようと
する勢力がいるので、気を付けなければならない。
この特集記事の方向性は間違っていない。
天皇陛下の「退位」と「譲位」を特措法で済ませてしまおうと
いうのは、あまりにも乱暴で、天皇の権威を傷つける行為なのだ。
そこを弾劾してくれたのはありがたい。